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2004年11月の日記
2004年11月30日(火)

 「さぬきの夢2000で作ったうどんがうまいかうまくないか」「さぬきの夢2000とASWのどっちがうまいか」などというのは、こんなのは個人的な好き嫌いの話だから、一般的な正解はないし、私はそんなものを求めようとは全く思わない。個人一人一人の中に「私はこっちがうまいと思う。こっちが好きだ」という答があるだけである。
 ちなみに私はASWのうどんの方が好きであるが、これもただ「私はこっちが好きだ」というだけの話である。おそらく「さぬきの夢2000のうどんの方が好きだ」という人もいるだろうが、それはそれでいいのである。「どちらがうまいか」という情緒的な「好き嫌い」の話は、基本的に「確定することのない」話である。

 ところが、「どちらが本物か」というのは、人為的な認定などによってしばしば「確定する」のである。だからこないだから「客観的裏付けもなく、安易にそんなことをやっていいのか?」と言っているのである。しかもそれを推し進めているのが県であり、組合であり、識者であるというところに、なし崩しにいずれ「確定」されてしまいそうな恐ろしさがあるのである。

 「さぬきの夢2000で作ったうどんが本物の讃岐うどんである」と言うには、あまりにも無理がある。何しろつい数年前まで、さぬきの夢2000は「なかった」のである。しかし讃岐うどんはそのはるか昔からあり、1970年代からは県人の指導で生まれたオーストラリア産の讃岐うどん用小麦ASWが讃岐うどんの圧倒的主流になり、この10年来の讃岐うどんブームはまさに、ASWで作った讃岐うどんが人気を集めて爆発したブームなのである。だから誰が何と言おうと、「さぬきの夢2000で作ったうどんが本物の讃岐うどんである」という主張は、これまでの讃岐うどんをすべて「ニセモノである」といっていることと同義であり、そんなバカなことはないのである。

 ちなみに「オーストラリア産小麦以前の讃岐うどんこそが本物の讃岐うどんである」という意見も聞いたが、それならさぬきの夢2000ではなく、1960年代の「農林26号」を再現すればいいのである。そしてそれができたら、市場に出すだけでいいのである。どこかの店がそれを使って出すか、あるいは味や技術に問題があって採用しないか、それは店の自由である。さらに出たうどんを食べるか食べないかは、客の自由である。それを権威のある組織や団体が「これが本物であるから店は使いなさい。客は食べなさい」と言うことが、客に言わせれば余計なお世話なのである。

 私が非常にうさんくさく思っているのは、そこだ。いまだに「さぬきの夢2000で作ったうどんが本物の讃岐うどんである」という表示があちこちから出てくる。そこへ、今日付けの四国新聞の「一日一言」でこんなことが紹介されていた。

(中略)JA香川県による半生うどんの不当表示が発覚した直後、同協議会所属のプロジェクトチームの会合が開かれた。「豪州産小麦でも、おいしいうどんができることを宣伝してほしい」「夢2000は扱いが難しい」。席上、うどん業界のメンバーからポロリと出た本音にマスコミが群がった。

 「豪州産小麦でも、おいしいうどんができることを宣伝してほしい」って、誰が発言したのか知らないけど、違うでしょう? 「豪州産小麦でも」ってどういうことですか? 豪州産小麦の讃岐うどんにみんなが「うまい、うまい」言うてブームになったんでしょう? 豪州産小麦が讃岐うどんをここまで定着させ、ブームを支えてきたのである。 あえて言うなら「さぬきの夢2000でも、おいしいうどんができる」でしょうが。何か、根本的に讃岐うどんの歴史と事実を無視しているとしか思えない。相手(ASW)が何も言わないのをいいことに、いきなり高飛車になってASWを見下しているとしか思えない。ついこの間出てきたばかりなのに、いつのまに、何の客観的根拠でASWを見下す立場になったのだ。

 私は別にASWから頼まれたわけではないが、夢2000側が権威と税金まで使って「こっちが優れている」「こっちが本物だ」という宣伝をしているのに、ASW側は発言の媒体も機会もほとんど与えられてないので、ちょっとだけ書いているのである。マスコミはあまり扱ってくれないが、今までASWで讃岐うどんブームを盛り上げてきたうどん屋のおっちゃんらは言う。

「わしらのやってきたことはニセモノやっちゅうんかい!」

 これに、さぬきの夢2000を「こっちが優れている」「こっちが本物だ」という宣伝をしてきた人たちはどう答えるのだ。

 蛇足ながら、全国の方々で知らない人がいるかもしれないので言っておく。これまで全国誌やテレビで紹介されて「讃岐うどん巡りブーム」の原動力となり、今も超人気店の山越、なかむら、谷川米穀店、がもう、宮武、やまうち、おか泉、はりや、香の香、わら家、田村、彦江、清水屋、あたりや、松岡、山下、白川、上戸、SIRAKAWA、橙家、五右衛門、讃岐家、池上、大円、飯野屋、さか枝、竹清、うどん棒、鶴丸、松家、小縣家、渡辺、赤坂、岩田屋、木村……書ききれないが、これらすべての店はオーストラリア産小麦で超人気を得ている店で、さぬきの夢2000は使っていない。それと、これらのほとんどの店が組合に入っていない。謎を解け(笑)。
2004年11月29日(月)

 更新頻度が忙しさと比例している。反比例か。12日も空いたら、どこにさかのぼって書いたらええのかわからんようになったがな。
 18日以降、ここまでの間の主な仕事や用事は、講義がたくさんと大学行事が3つ、受託研究の会議と企画作り、手間のかかる原稿制作が3本、詫間の実家の法事、テレビ出演、会合4件。探検モノが3つに東京出張が1回。

この間、行って食べたうどん屋はちょっとバラエティです。
・山谷うどん
・清水屋
・かめびし屋
・がもう
・木村
・かな泉のセルフ
・山の家
・いしうす庵屋島店
・かすが町市場
・丸山

 通が見たら、ちょっとだけ意図がわかるか(笑)。
 さて、「さぬきの夢2000こだわり店」の「いしうす庵」に置いてあったパンフレットを見たら、さぬきの夢2000を100%使ったうどんを「ほんまもんの讃岐うどん」と書いてあるでないの。こないだの不正表示事件で今、一番懸念されているのが「夢2000で作った讃岐うどんが本物で、オーストラリア産小麦で作った讃岐うどんはニセモノだ、という間違った認識が広がること」であって、組合でも「そうではない」とコメントしたばっかりやないの。

 と思っていたら、今日、家の郵便受けに投げ込まれていた「コープ」のパンフレットを見て目が点になった。「さぬき夢うどん」なる商品の紹介文に「香川県産小麦さぬきの夢2000 100%でつくったホンモノの讃岐うどんです」と書いてある。どうしたんですか。みんなで間違った認識を広めることになったんですか?

 と思ったらそのコープの商品、冷凍ゆでうどんなのに名称が「かまたまセット」だ。「夢うどんをもどしてお湯を切り、生卵とつゆをかけてアツアツで召し上がれ!」って。

 言うとくが、それは「かまたま」ではないぞ。「かまたま」は「釜あげ卵うどん」だ。ゆで冷凍うどんは「釜あげ麺」ではないのだから、「かまたま」であるはずがない。ちなみに今、スーパーなどにも冷凍ゆでうどんで「かまたま用」という商品が並んでいる。「正しくない」という意味で、これらは「不正表示」である。もう、本場のプロたちが讃岐うどんをワヤしよります。

 「かまたま」はそのネーミングもメニューも山越が発祥であるが、その本家山越は「かまたま」を商標登録して囲うこともなく、「広がってくれればいい」という感動的なほどの善意を見せてくれている。事実、メニューとしての「かまたま」はあっと言う間に広がって、今やいろんな店で人気メニューになっている。なのによってたかってこんなことをして山越の「かまたま」をワヤにしたらいかん! ついでに言えば、はるやまに至っては「釜たま」という名前でうどん屋まで始めているが、もし山越に断りなく始めたのなら、法的にどうこう以前に、これはさすがにやりすぎだと思う。

 この1週間は「東讃探検ツアー」「峰山のアヤシイ物体探検事件」「さぬきガールズうどん探訪事件」「笹塚のカレー12食事件」など、中ネタが結構あるが、今日は疲れたのでここまで。
2004年11月17日(水)

 こないだの日曜日、ごんが「イヤだ」と言うので一人で屋島に上がってきたのである。

ごん「あのね皆さん、私、あるアクシデントで1週間ぐらい入院してたんですよ。あなた、知ってましたよね?」
田尾「もちろん」
ごん「で、日曜日に退院するということも知ってましたよね?」
田尾「当然。そやから日曜日に電話したんやないか」
ごん「でね、皆さんちょっと聞いてくださいね。日曜日の昼、退院して家に帰ったばっかりのところへおっさんから電話がかかってきたんですよ。何てかかってきたと思います? “今から屋島行くぞ”って。“何しに行くんですか?”って聞いたら“屋島の上、全部調査する。北嶺の先まで歩いて行く”って。屋島に上がって駐車場から北嶺の先まで、車で入れんので歩いて片道30分はかかるんですよ。駐車場って、屋島の真ん中あたりにあるでしょ? ということは、北嶺も南嶺も全部歩いたら、たぶん2時間は歩くことになる。もっかい言いますけど私、今病院を退院したばっかりなんですよ」
田尾「リハビリには最適やないか」
ごん「死にますがな!」

 ま、ごんが入院前より元気になって退院してることは知ってるのだが、詳しくは黙っておこう(笑)。家内を誘ったら「屋島に行く途中で降ろしてくれたら私、買い物に行ってるから、山の上歩いて帰りに拾ってくれるんなら行く」言うので、私は「それは“一緒に屋島に行く”とは言わん」と言って、単独登頂に出かけたのである。

 屋島はここ10年来、県内のいろんなところで観光客減少の象徴みたいに言われているが、その理由についてはかなり情緒的な憶測でしか語られていない。ちゃんと行って、人が動くための要素に照らし合わせて一つ一つ確認してみれば、具体的なことが割と簡単にわかるのに。

 山上の展望台や水族館や屋島寺といったあの中心のエリアには、観光バスの客やドライブ客が数百人来ていた。話をしているのを聞くと、「期待してなかったけど、結構いいやん」という声が聞こえる。ポイントをいくつか挙げると、
・展望スポットとしてのポテンシャルは香川県でナンバーワンである。
・県外からドライブで来る客には、ドライブウェイの料金610円は大して苦になっていない。「有料ドライブウェイがネックになっている」という意見は、対象者の分類ができていないと思う。それは「近くの人が気軽に山上に上がるにはネックになる」という話である。
・「北嶺の展望台(屋島の先)の魅力をもっとアピールするべきだ」という意見があるが、それは現状のままでは無理である。駐車場から行って帰って1時間はかかる。観光バスの行程に組み込むのは無理である。ドライブ客にはどうかと言っても、先に行くまで遊歩道が木々に覆われてほとんど眺望が開けてないのだから、よっぽど時間があるか、ウォーキング目的かでなければとてもおすすめできない。
・歩きの客には、山上までのアプローチが分断されすぎている。最寄りの電車の駅から麓のハイキングコースの入り口までが分断(ドライブウェイのせいでケーブル利用客が激減したと言われているが、この部分の分断と、山上駅から展望台までの分断=徒歩10分以上=が大きい)。

 たぶん屋島は、情緒的に良さを訴えるだけではどうにもならないと思うが、対象客を分類して「何をしに行くところか」を構築し直してきちんとプロモーションすれば、客は増えると思う。ちなみに名物と言われる「イイダコおでん」は、料理としてあの硬さとにおいをどうにかした方がいいと思う。山上のうどんは冷凍うどんでした(笑)。お土産屋の1軒にあった「絹てまり」は、ちょっと香川の他の観光みやげには見られないレベルの素敵な商品です。
2004年11月16日(火)

 たまには私も毒を吐く(笑)。

 あちこちから「さぬきの夢2000」の不正表示事件についてのコメントを求められるのである。最初の頃は「不正表示についてどう思いますか?」という質問。そんなもん、「不正表示はいけません。正直に商売しましょう。以上」ですがな(笑)。

 そのうち、質問の方向性が少しずつ変わってきた。曰く「さぬきの夢2000はうどんに加工しにくいと言われています。いくつかのうどん店で聞いても“作りにくい”と言っていましたが、これが問題の原因ではないでしょうか?」。要するに原因究明として「夢2000が加工しにくいからASWを混ぜた」という因果関係を指摘しようとしているようなのだが、それはASWを混ぜた業者と街のうどん店を並べて語ってもあまり意味がない。それは、ASWを混ぜた業者と、夢2000を100%で実際に作っている例えば石丸製麺や日の出製麺とを並べて語らないといけない話である。すると、ASWを混ぜた方は「手延べ」で、石丸や日の出は「手打ち」であるというポイントがちゃんと浮かび上がる。一方でちゃんと100%夢2000で作っている業者がいるのだから、不正表示の原因は単に粉の難しさのせいではないと思うのである。

 さらに「さぬきの夢2000についてどう思いますか?」という質問も来始めた。質問者の方々(マスコミも含む)のニュアンスは、どうもさぬきの夢2000の品質や、中にはプロジェクト自体に、何かしっくり来ないものを感じているようである。

 私の意見はこうである。

 「今(ASW)より優れた商品(小麦)を開発しよう」という試みは、あって当然だと思う。例えば企業活動に置き換えてみれば、「今、20年〜30年にわたって高評価を得ているヒット商品がある。そこで、さらに商品のラインナップを強化するためにもっと優れた商品の開発に着手する」というのは、当然の試みである。従って、開発担当の方々には「ぜひ頑張って素晴らしい小麦を完成させてください」と応援したい。

 けど、今の「さぬきの夢2000」のプロジェクトは、私には疑問点が2つあるのである。

 1つは、多くの関係者が「まだ完成ではない。改良しなければいけない課題がある」と言っているのに、商品に問題を抱えた状態で「さぬきの夢2000は優れている」というPRをどんどんやっているということである。完成していない(問題を抱えた)商品を売り出して「素晴らしい商品だ」とPRするというのは、普通の企業活動では考えられない行動であり、その真意がわからない。ちなみに「さぬきの夢2000」のPRパンフレットには、「食味、滑らかさ、粘弾性、硬さ、外観、色」という客観的に優劣の付けがたい情緒的な項目の総合評価で、「さぬきの夢2000はASWより優れている」というPRがある。正直なところ、これはやりすぎでしょう。ASWの製造元がその気になれば、これは訴えられても仕方がない情緒的な比較広告の恐れがある。

 2つ目は、ASWを駆逐するのが目的であるかのようなプロモーションの「意味」に対する疑問である。私の聞くところによると、ASWは1970年頃に(もっと早いのかもしれないが)、県産小麦の減産による原料不足を解消するために、香川県の讃岐うどんに関わる方々が技術指導をしてオーストラリアでの小麦の海外生産、調達というプロジェクトに取り組んだ結果、実現したものだと聞いている。これには当時の金子知事も橋渡しに尽力したと聞いている。それが事実なら、その後のASWが讃岐うどんの繁栄に与えた影響を考えると、優れた先見の明によるまさに「プロジェクトX」である。それを駆逐しようとするかのようなプロモーションの意味は、「先人の偉業を否定する」ということになるのではないか。

 「さぬきの夢2000」は、ASWにコストも負けない、扱いやすさも負けない、そして風味は違う方向性で優れている、というところにぜひ到達して欲しいと思う。そして、ASWと夢2000、さらにまた違った方向性の新しい優れた粉がいくつもでき、店や企業ではそれを単独で使ったりブレンドしたりしてバラエティな競争をするという状況になれば、讃岐うどんはさらにバリエーションが充実して楽しいことになると思う。しかし、行政のやることは「選択肢を並べる」、あるいは「選択肢が出てくるように環境を整える」という、そこまでだと思う。ある1種類の粉(さぬきの夢2000)だけを強力に「PR支援する」というのは、どうも違うような気がするのである。

 ちなみに四国新聞と毎日新聞で、識者の方の「今回の不正表示事件は、今の“作られた讃岐うどんブーム”が原因である」という趣旨の意見が紹介されていた。この方は何かにつけて私を悪者にしたいようなのだが(笑)、ブームというのは派手だろうが静かだろうが、マスコミの紹介によろうがクチコミだろうが、誰かに作られて起こるものである。さらにそれが不正表示の原因だというのは、それは遠因も遠因、あまりに遠すぎてほとんどお門違いである。
2004年11月11日(木)

 早朝、というか日付が11日になったばかりの深夜1時に、ニューヨークの西岡からメールが来た。

NYはいきなり10度を切る寒さになってしまいました。お元気でしょうか。
本日11月10日付けNY Times朝刊のダイニングセクションで「NYでラーメン屋とか麺のレストランが増えてきている」という記事があってその中に「恐るべきさぬきうどん」の紹介記事があったでよ! 著書は香川大学教授だそうな。いいとこついとったけど惜しいな、ニューヨークタイムズ。記事おくりましょーか?

 添付メールで送ってもらったニューヨークタイムズの記事によると、

(中略)
But it was little known until 2002,when a Kagawa university professor published a surprisingly entertaining book,“Osorubeki Sanuki Udon”(“The Magic of Sanuki Udon”),with about 800 tasting reports on local noodle shops. The book become a national best seller,and Kagawa has developed a Sanuki Udon cottage industry of tours,classes and tastings,like the Peter Mayle-theme tours of Provence.

 おー、いろんなとこ間違ってるぞ(笑)。「恐るべき」は1993年発行やのに2002年になっとる。指摘の通り、俺、香川大学の教授になっとる。800軒もレポートしてないぞ(それは「讃岐うどん全店制覇」だ)。ニューヨークタイムズもこんな記事は情報確認せずに載せるんかな。

 ほほー、「恐るべきさぬきうどん」は「ザ・マジック・オブ・サヌキウドン」と訳されるのか。フランスの雑誌「アンテルナシオナール」に載った時は「テリブル・サヌキウドン」と訳されてたけど(笑)。田舎の怪しい製麺所は「コテージ・インダストリー(小屋みたいな工場)」らしいぞ(笑)。

 それにしても後半、「ピーター・メイルみたいな…」と書かれている。ピーター・メイルといえば、1990年頃「南仏プロヴァンスの12カ月」というエッセイ集を出版して世界的にプロヴァンスブームを起こしたおっちゃんだ。ちなみにピーター・メイルは出版後、「南仏プロヴァンスの12カ月」を自ら朗読したカセットテープも発売。さらに「南仏プロヴァンスの12カ月」はテレビドラマシリーズにもなっている。 それは私とは格が違うだろう(笑)。

田尾「俺も“恐るべき”の朗読版カセット、出さないかんのか? けどきみのセリフもよっけあるぞ」
ごん「出さんでええです」

 本日、飯山高校で創立90周年記念の講演。大学に帰って授業1本。善通寺総本山で企画会議。おもろい話、いっぱいあるけど書けん。
2004年11月9日(火)

 しかし日曜日のシンポジウムで、「讃岐うどんを全国へ、世界へ」という方向に進めようとする進行側に対し、一貫して「讃岐うどんは調子に乗ってはいけない。思い上がってはいけない。麺の中では格下だという謙虚な気持ちで……」と言い続けてよかったというか、何か予言みたいになったというか、さぬきの夢2000の偽装表示だって。

 「さぬきの夢2000を100%使用」と表示しているJAの商品を調べてみたら、さぬきの夢2000はちょっとだけしか配合されてなくて、大半はオーストラリア産小麦が入っていたという事件。昨日の晩、牛乳屋さんをはじめ、マスターにねえちゃんに姉御なおちゃん、天敵原田、馬の助、新開という最強メンバーがそろった アップタウンでこのニュースを聞いた時、全員の意見は「その方がうまいんちゃうか?」であったが(笑)、偽装表示をしたということは「そうする理由があった」ということなので、憶測でニュースに突っ込むのは私のスタイルではないがいろいろ選択肢を並べてみたのである。

(憶測1)オーストラリア産小麦の方が安いので、安く作って儲けようとした。
(憶測2)さぬきの夢2000は加工しにくいので、技術的に簡単な方を選択した。例えば、既存の生産ラインではうまくできなくて、かといってラインを改造するには莫大なお金がかかるので既存ラインでできるギリギリの所でさぬきの夢2000の粉の量を止めた。
(憶測3)さぬきの夢2000の粉の量が絶対的に足りないのに大量に生産販売しようとして、オーストラリア産の粉を混ぜた。
(憶測4)消費者によりおいしいうどんを届けようという一心で、オーストラリア産小麦を混ぜた(笑)。
(憶測5)偽装してわざと発覚させ、「さぬきの夢2000が本物の讃岐うどんで、オーストラリア産小麦で作ったうどんはニセモノだ」というイメージを一気に広めようという恐るべき陰謀である(笑)。

 最後は勝谷さんの謀略史観みたいになったけど(笑)。ま、いずれにしてもいろんなことを乗り越えて、讃岐うどんが「おいしいうどん」であり続ければいいと思います。ちなみに伝承料理研究家の奥村先生に話を聞いたら、オーストラリア産小麦のASWは、最初、香川県の人が県産小麦を向こうに持ち込んで改良を重ねたものだと言っていた。それが本当なら、ASWのルーツは県産小麦です。

 で、「世界の麺好きサミット」を担当していた細谷さんからメール。
「味覚のテロリスト発言の先生(奥村先生)が、田尾さんのことを“えー感じの子や”と言ってました」
って。奥村先生にとってみれば私は子どもの年齢。何か、久しぶりにうれしいです(笑)。
2004年11月7日(日)

 午前11時40分、サンポートで行われる「うどんフェスティバル」に向けて自宅を出発。昼前に控え室まで来てくれと言われていたので、車で5分くらいの距離だから楽勝と思っていたら、サンポートで木下サーカスをはじめとするイベントが5つもあるらしくて、駐車場が満杯状態で、ぐるぐる回ってたら遅刻した。

 私の出番は「世界の麺好きサミット」なるパネルディスカッションみたいなもので、進行はRNCの鴨居真理子さん。出演は私と伝承料理研究家の奥村先生と香川日伊協会会長の秋山さんと中華料理家の楊天福さんとタレントの藤崎奈々子さん。鴨居さんとはむちゃくちゃ久しぶりの対面、放送局では何回かすれ違ってあいさつしたことはあるような気がするが、ちゃんと話したのは確か鴨居さんが高校生、私がタウン情報の編集長の時に大塚製薬の何かのコンテストで鴨居さんが出場者で私が審査員の一人で、私と小橋アナウンサーと鴨居さんの3人で高松から徳島まで行って来た時以来である。大昔やがな。でも何年ぶりであるかは鴨居さんの歳がわかるので黙っとこう(笑)。で、藤崎さんとは2年前のテレビ番組ロケ(TBS-RSKのうどん番組でセイン・カミュ氏と一緒に回ったやつ)以来、その他の方々とは初対面である。

 こういうパネルディスカッションは、本番になるとたいてい一人ずつ順番に持論を話して、それを2〜3回やっておしまい、というパターンになるのであるが、事前に送られてきた進行予定を見たらその通り、1人ずつ2周してまとめておしまい、みたいになってたので、私は「2回、何かをしゃべればいいんだな」と思って余裕で構えていたのである。そしたら控え室での顔合わせで、主催者側はフリートークのやりとりでにぎやかにやりたいという意向があるようで、いきおい、混ぜ返し役は私しかいないということでそういう役回りをよろしくって(笑)。しかも最後にサミットのホスト県の代表ということで「共同宣言」をしてほしいと。共同宣言は「世界の中心で麺をさけぶ」(笑)。私に? それを宣言しろと? はいはい、何でもしますよ(笑)。もう本番1時間前で、変わりも何もききませんし。

 本番は1時間半。みんなの話にわざといろいろ絡んでいって、ちょっと無理して混ぜ返させていただきました。きっと真面目な聴衆の方々には「ふざけたやつだ。調子に乗っている」と思われた方がたくさんいらっしゃると思う。こうやって評判落としていくんやな(笑)。ま、根が笑われ役なんで、別にええです。

 合間に奥村先生といろいろお話をさせていただきましたが、興味深かったのは空海とうどんの話。私はこれまで、他の研究家の方から「空海が中国からうどんの原型を持ち帰った。最初は“こんとん”と呼ばれるワンタンのようなものだった。その“こんとん”が“おんどん”となって“うどん”となった」みたいな話を聞いていたのだが、奥村先生はいろんな資料や調査から「空海の時代には大きく“こんとん(広東語でわんたん)”と“ほうとう”の2つのルーツがあり、“こんとん”は“わんたん”として現在に至る。“ほうとう”の方が一方で今の“ほうとう”になり、もう一方で“ほうとう”から切り麺に進化して“おんどん”、“うどん”となった」という説を聞いた。全部は書けないが、いろんな資料や研究、計算の裏付けも話していただき、すごく説得力があった。奥村先生、かなり年輩でゆっくりしゃべるが(笑)、おもろいです。今度ゆっくり話を聞きに行こう。

 イベント終了後、客席に来てたH谷川君(清水屋の大将とかめちゃんの3人で来てた)から電話。
H谷「あ、団長、お疲れさんです」
田尾「どやった? ちょっと苦しんでた?」
H谷「苦しんでたのはようわかりました(笑)。けどオッケーですよ。小ネタの新ネタも結構受けてましたし。“小麦粉リーグ”の話も(笑)」
田尾「“財布の中身が弱ってる”ネタも(笑)」
 まあ、“田尾節”のファンの方々には受けたみたいです(笑)。
2004年11月3日(水)

 今日は文化の日なので、新聞をちゃんと読んでみよう(笑)。

*新球団は楽天。(中略)審査小委員会の瀬戸山隆三委員(ロッテ球団代表)が、パ球団の年間平均赤字額を約32億円と説明。仮に40億円の赤字を想定した場合、2者の経常利益に与える影響率が決定的に違うと具体的に説明した。
*近鉄球団社長 ライブドアには(パ球団の平均赤字)年間約30億円の赤字に持ちこたえる体力がないと判断した。

 これ、球団はそれぞれ独立経営なんだから、赤字額を平均することには意味がないでしょう。
 さらに「パリーグの球団は毎年30億円の赤字をずーっと出し続ける」という前提をすることもおかしいでしょう。それはこれまでの球団の経営のやり方ではそうだったというだけであって、ライブドアも楽天も「数年で黒字にする」という事業計画を立てているのだから、30億円の赤字が出続けるという前提は意味がないですよ。それは旧来の価値観の思考です。「新しい血」とか「新風」とか言っていながら旧来の収支を前提にすることの矛盾に、気づいてないんじゃないですか?

*新規参入とはいえ「弱小球団」を誕生させたのでは意味がない。(中略)各チームはある程度、戦力が均衡しないとゲームの興味が失われるのは自明のことだ。

 これ、球団経営の話と外野のファン(球場に行かないファンや評論家)の話をごっちゃにしてますね。優勝できなくても黒字になるという球団経営は、十分可能性がありますよ。外野のファンが興味を失っても、お金を払うファンを獲得する戦略はたぶん立てられますよ。今までの赤字を出している球団の経営のやり方がうまくなかっただけでしょう。

 球団経営を支えるのは、お金を払って球場に行くファン。球場に行かないファンは球団に1円の収入ももたらさない。今回のプロ野球界の騒動については、マスコミも評論家も最初からずーっと、この2つのファンをごっちゃにしてますね。「街の人の声」のほとんどは後者でしょう。たぶんほとんどが、球団経営とは関係ない人たちの声です。楽天、いきなり優勝したらめちゃめちゃおもしろいけど、「順位は最下位で、球団収支がパリーグのトップ」になったらもっとおもしろいなあ(笑)。
2004年11月2日(火)

 「人材活用論」の授業中、会議体系から見る株式会社の物事の決定システムの話から、ちょっとだけバランスシートの分析に触れたら、真鍋や川田や田渕や、数人が着いてきた。まさかこいつらが着いてくると思わんかったがな(笑)。とりあえずうちの学科の数人、バランスシートを数年分見たら、企業の長期的体力と短期的資金調達力がある程度判断できるようになりました。で、できるようになったのでご褒美に昼、“他人の家に土足で上がる”冨永に行ってうどんおごってやった。何かイルカの調教みたいや(笑)。

 うどん中の会話。
真鍋「電話の“もしもし”って、何なんですかね」
重谷「何か“申す申す”から来てるらしいですよ」
田尾「おー、何か聞いたことあるような……」
重谷「“申す申す、私が申す”とか言うてたらしい」
田尾「“私が申す”? ちょっと待てよ。ということは、“もしもし”言うたら、そいつは“私が申す”ということか?」
重谷「はい、たぶん」
田尾「ということは、例えば俺が誰かに電話して、相手が“もしもし”言うて出たら、相手が“私が申す”言うてることやから、俺は黙って待っとかないかんのか」
真鍋「それ、無言電話ですよ!」
田尾「ということは、無言電話は本来正しいことをやってるんや!」
真鍋「大変な事実が判明しましたね」

 ま、大変な事実ではないと思うが。
 夜、香川県からの受託研究の第6回ミーティング。香川県の新しい情報発信方策の研究であるが、ちょっと目新しい成果物に向かって頑張っております。プロジェクトの委員は、ごんをはじめとするおよそ行政の懇談会や委員会には縁のないような、そんじょそこらの雑多なメンバー。でも新しい方策の創出であるから、これでいいのである。いかに肩書きがあろうと、旧来の価値観の方々では新しいものはなかなか生み出せないことは、幾多の会合の経験からわかっている。目標は年内に概要をまとめるところまで行く。行けるか?
2004年11月1日(月)

 高松南高で、1年生300人くらいを対象に進路指導講話を約1時間半。タイトルは「発想力の素」。久しぶりの「うどんの話」なしの講演や(笑)。

ごん「“高校における発想力開発と讃岐うどん”とかいうタイトルやったんやないですか?」
田尾「何でやねん! ちゃんと大学の入試課から回ってきた真面目な仕事や」

 言うとくが、大学で今担当している後期の授業は「人材活用論」「観光政策論」「観光文化論」「カルチュラル・マネジメント概論」「フェスタ・プラクティカム」「フィールド・プラクティカム」「ワークショップ」。うどんの話は全然ないからな。

 それにしても高校1年生は、はっきり言ってかたまりとしてはまだ中学生みたいなもんで、なかなかつかまえるのが難しい。文化人講座全盛の頃は中高生はお手のものだったのだが、おっちゃんも歳いったし、昔みたいにバカ話でドッカンドッカン笑わせるわけにもいかず、ついつい難しい話をしてしまってすんません。けど壇上から見てたらかなりの生徒が目を見開いて着いてきてたみたいで、ま、ええとするか。自分が高校生の時のことを考えると、みんな十分です。先は長いから。

 講演後、教頭先生たちとちょっとだけお話しをしてきました。やっぱり高校生は難しいとおっしゃってました。私はタウン情報時代から中高生に対して、一貫して「子どもの目線に下りない」というコミュニケーションの取り方をやってきた、ということをお話ししてきました。彼らは精神的に背伸びをしているから、彼らの年齢まで下りていったら、大人のあざとい言い回しを見抜かれるのです。
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